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昭和59(オ)1204 音楽著作権侵害差止等請求事件

>判例・裁判例>著作権・著作隣接権(侵害と救済)判例・裁判例>

事件の概要

 X(原告・被控訴人・被上告人)は,音楽著作物たる楽曲・歌詞等に係る著作権ないしその支分権たる演奏権等について、著作権者から信託的譲渡を受けて管理する著作権等管理事業者である。
 Y(被告・控訴人・上告人)らは,Yらの共同経営にかかるスナツク等において、カラオケ装置と、Xが管理する音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き、ホステス等従業員においてカラオケ装置を操作し、客に曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させていた。
 Xは、Yらのかかる行為が、Xの管理する演奏権を侵害するとして、Yらに対し演奏の差止め及び損害賠償の支払を求めた。
 1審及び2審は、Xのこの請求を認容した。
 これに対し、Yらは、これを不服として、上告した。

判旨

 原審の適法に確定したところによれば、Yらは、Yらの共同経営にかかるスナツク等において、カラオケ装置と、Xが著作権者から著作権ないしその支分権たる演奏権等の信託的譲渡を受けて管理する音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き、ホステス等従業員においてカラオケ装置を操作し、客に曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させ、また、しばしばホステス等にも客とともにあるいは単独で歌唱させ、もつて店の雰囲気作りをし、客の来集を図つて利益をあげることを意図していたというのであり、かかる事実関係のもとにおいては、ホステス等が歌唱する場合はもちろん、客が歌唱する場合を含めて、演奏(歌唱)という形態による当該音楽著作物の利用主体はYらであり、かつ、その演奏は営利を目的として公にされたものであるというべきである。けだし、客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法二二条参照)は明らかであり、客のみが歌唱する場合でも、客は、Yらと無関係に歌唱しているわけではなく、Yらの従業員による歌唱の勧誘、Yらの備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲、Yらの設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて、Yらの管理のもとに歌唱しているものと解され、他方、Yらは、客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ、これを利用していわゆるカラオケスナツクとしての雰囲気を醸成し、かかる雰囲気を好む客の来集を図つて営業上の利益を増大させることを意図していたというべきであつて、前記のような客による歌唱も、著作権法上の規律の観点からはYらによる歌唱と同視しうるものであるからである。
 したがつて、Yらが、Xの許諾を得ないで、ホステス等従業員や客にカラオケ伴奏によりXの管理にかかる音楽著作物たる楽曲を歌唱させることは、当該音楽著作物についての著作権の一支分権たる演奏権を侵害するものというべきであり、当該演奏の主体として演奏権侵害の不法行為責任を免れない。
カラオケテープの製作に当たり、著作権者に対して使用料が支払われているとしても、それは、音楽著作物の複製(録音)の許諾のための使用料であり、それゆえ、カラオケテープの再生自体は、適法に録音された音楽著作物の演奏の再生として自由になしうるからといつて(著作権法(昭和六一年法律第六四号による改正前のもの)附則一四条、著作権法施行令附則三条参照)、右カラオケテープの再生とは別の音楽著作物の利用形態であるカラオケ伴奏による客等の歌唱についてまで、本来歌唱に対して付随的役割を有するにすぎないカラオケ伴奏とともにするという理由のみによつて、著作権者の許諾なく自由になしうるものと解することはできない。

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