事件の概要
X(原告)は,名称を「ICモジュール,ICモジュール板,及び通信システム」(平成19年5月25日付けの補正により「ICモジュール板及び通信システム」と,平成21年7月13日付けの補正により「通信システム」と順次変更された。)とする発明について特許出願をし,平成19年5月25日付けの補正,平成21年7月13日付けの補正及び平成22年3月12日付けの補正をしたが,特許庁は,平成22年3月12日付けの補正を却下するとともに,拒絶査定をした。
これに対し、Xは,拒絶査定に対する不服審判を請求をするとともに,補正をしたところ,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決をし,その理由中で,前記補正を却下した。
Xは、これを不服とし、提訴した。
判旨
Xは,請求項1に係る本願発明につき特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした審決の判断については争っておらず,審決が,その他の請求項に係る発明について検討することなく出願全体を拒絶した点について,請求項3〜10に係る発明が進歩性を有することを理由として取り消されるべきであると主張する。
しかしながら,特許法は,一つの特許出願に対し,一つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ,これに基づいて一つの特許が付与されるという基本構造を前提としており,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,その特許出願全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかない。したがって,一部の請求項に係る発明について特許をすることができない事由がある場合には,他の請求項に係る発明についての判断いかんにかかわらず,特許出願全体について拒絶査定をすべきことになる。本件において,請求項1に係る本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであることは,Xも争っておらず,そうである以上,請求項3〜10に係る発明について判断するまでもなく,本件出願は出願全体として拒絶されるべきであるから,これと判断を同じくする審決に違法はない。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。