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平成24(行コ)10003 決定処分取消請求控訴事件

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事件の概要

 X(原告・控訴人)は、工業所有権の保護に関するパリ条約に基づいた優先権の主張を伴う国際出願をしたが、翻訳文提出特例期間の経過後に翻訳文を提出したために,指定国である我が国における国際特許出願(本件出願)を取り下げたものとみなされ,国内書面及び翻訳文に係る両手続がいずれも却下された(本件各処分)。
 Xは、上記優先権の主張を取り下げる旨の書面(本件取下書)を提出したことにより,優先日が国際出願日に繰り下がったから,翻訳文提出特例期間の経過前に翻訳文を提出したことになる、と主張して,本件各処分の取消しを求めて、提訴した。
 原判決は,本件出願はXが翻訳文提出特例期間内に明細書等の翻訳文を提出しなかったことにより,取り下げられたものとみなされ,本件取下書を提出した時点では,特許出願として特許庁に係属していないから,当該出願に関して,特許庁における法律上の手続を観念することはできず,本件取下書の提出をもって,優先権主張の取下げの効果を生じさせるものと認めることはできないなどとして,Xの請求を棄却した。
 Xは,これを不服とし、控訴した。

判旨

1 Xは,要旨,パリ条約に基づく優先権を主張する国際出願の場合,優先権主張が有効か無効か確定しなければ,優先権を主張する国際出願の優先日を確定することはできず,その結果,国内書面や翻訳文の提出期限も決定していないことになると主張し,これを前提として,平成22年1月22日の特許庁長官に対する本件取下書の提出によって,平成19年1月23日を優先日とする優先権主張が取り下げられた結果,本件出願に係る優先日は,本件国際出願の日である平成20年1月23日に繰り下がり,これに伴い,本件出願についての国内書面提出期間の満了日も平成22年7月23日に繰り下がるから,本件出願は法184条の4の要件を満たす合法的な出願であり,本件各処分は違法である旨主張する。
 しかしながら,そもそも,パリ条約に基づく優先権の主張を伴う国際出願において,優先日は,期間の計算上,優先権の主張の基礎となる出願の日をいうのであり(特許協力条約2条(ⅺ)(a)),当該優先権の主張が有効であるか否かといった,指定官庁における国際出願の実体審査の結果によって,左右される性質のものではない。
 このように,優先日の判断が指定官庁における国際出願の実体審査の結果に左右されるものでないことは,特許協力条約23条が,指定官庁は,同条約22条に規定する国際出願の翻訳文提出期間の満了前に,当該国際出願について実体審査を行うことを禁じ,国際出願の翻訳文提出期間が指定官庁における実体審査の開始前に設定されていることや,法184条の17が,外国語特許出願については,法184条の4第1項の規定よる翻訳文提出手続をした後でなければ,出願審査の請求(特許法48条の3)をすることができないと規定し,特許庁における実体審査を開始する条件として,同法所定の期間内に翻訳文提出手続を完了させることを要求していることからも明らかであり,この点に関するXの主張は採用できない。
2 そうだとすると,Xは,平成20年1月23日,欧州特許庁に対し,パリ条約による優先権主張(優先権主張日:平成19年1月23日)を伴う本件国際出願をし,同出願は,指定国に日本国を含むものであったから,日本国において,法184条の3第1項の規定により,本件国際出願の日にされた特許出願とみなされた(本件出願)が,翻訳文提出特例期間の満了日である平成21年9月14日までに明細書等の翻訳文を提出しなかったものであり,その結果,法184条の4第3項の規定により,当該満了日が経過した時点で,本件出願は取り下げられたものとみなされたものである。なお,同項の規定により取り下げられたものとみなされた本件出願については,特許法184条の4第4項及び第5項の規定は適用されない(平成23年法律第63号附則2条25項)。
 したがって,Xが本件取下書を特許庁長官に提出した平成22年1月22日の時点においては,本件出願は,既に取り下げられたものとみなされており,そもそも特許出願として特許庁に係属していないこととなるから,本件出願に関して,優先権主張の取下げを含む特許庁における法律上の手続を観念することはできない。
3 以上によれば,本件各処分について,X主張の違法事由を認めることはできず,他に本件各処分を違法とすべき理由も認められない。

注記:下線は判決文では引かれておりません。

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