事件の概要
X(原告)は、昭和53年5月以来、三色を組み合わせてなるライン(以下「本件ライン」という)を使用したウェットスーツ(以下「X製品」という)を製造販売している。
Yら(被告)は、三本のライン中二本までが本件ラインと同一の表示であり、また三属性による表示・XYZ表色系による表示(JISZ八七〇一)の各数値を比較してもかなり類似しているといえるラインを使用したウェットスーツの製造販売をしている。
Xは、YらがXの商品表示として周知である本件ラインと類似する商品表示を使用してXの商品と混同を生じさせているとして、Yらに対し、本件ラインに類似する商品表示の使用差止め等を求めて提訴した。
判旨
色彩は、本来何人も自由に選択して使用することが許されるものであるが、特定の単色の色彩又は複数の色彩の特定の配色の使用が当該商品には従来見られなかつた新規なものであるときには、特定人が右特定の色彩、配色を当該商品に反覆継続して使用することにより需要者をして右特定の色彩・配色の施こされた商品がこれを使用した右特定人のものである旨の連想を抱かせるようになることは否定できないところであり、このように商品と特定の色彩・配色との組合せが特定人の商品であることを識別させるに至つた場合には、右商品と色彩・色彩の配色との組合わせも又、商品の形態と同様、不正競争防止法一条一項一号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」たり得るものといわなければならない。
これを本件につきみるに、黄赤、青、黄みの緑、赤紫を中央の色とした同系色三色をそれぞれ明度の低い濃色から明度の高い淡色へ移行する色落ちに配列した色ラインを使用したウエツトスーツは、X製品の発売時である昭和五三年五月以前になかつたこと、本件ラインを使用したX製品がその後売り上げを順調に伸ばし、昭和五五年末までに海洋スポーツの各種専門誌にも自ら多数広告して宣伝に努め、また右各雑誌社の紹介記事にも数回にわたり掲載されており、これらの月当たり発行部数も八万部から三五万部と多く、販売地域も全国にまたがつていること、X製品に使用されている本件ラインは見た眼にも鮮やかで、人の眼を惹くに足るものであり、Xは、本件ラインを独占的かつ継続的にXのウエツトスーツに使用してきたといえることを考慮すると、本件ラインを使用箇所(1)ないし(25)に使用したX製品は、遅くとも昭和五五年におけるウエツトスーツの一般需要者の最多需要期を過ぎたと思われる同年八月末には、X商品であることの出所表示機能を獲得し、同業者、小売店、一般需要者などに広く知られるに至つたということができる。
注記:判決文に下線はひかれておりません。