事件の概要
X(原告)は,「セルフリペア」の標準文字からなる商標(以下「本願商標」という。)につき商標登録出願(以下「本件出願」という)し,その後、指定商品について補正を行ったため,本件出願の指定商品は,第9類「電気通信機械器具の,自己修復機能を有する部品及び附属品(自分自身で修繕・修理するための商品を除く)」となった。
特許庁は、本件出願について拒絶査定としたところ、Xはこれ不服とし、拒絶査定不服審判を請求をした。これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「本件審決という。)をした。
Xは、これを不服とし、提訴した。
判旨
1.本願商標
本願商標は,「セルフリペア」という標準文字からなり,第9類「電気通信機械器具の,自己修復機能を有する部品及び附属品(自分自身で修繕・修理するための商品を除く)」を指定商品とするものである。
2 本願商標の構成について
本願商標を構成する「セルフリペア」という一連の単語それ自体は,我が国の一般的な辞書類には記載が見当たらない。
ところで,「セルフ」という語は,本件審決当時の我が国の一般的な辞書類によれば,「「自分自身で」「みずから」「自動的に」の意」(広辞苑第6版。),「@「自分自身で」「自動的に」の意。他の外来語の上に付いて複合語をつくる。A「自己」に同じ。」(大辞林第3版。),「自分,自身。また,「自分自身の」「自動の」などの意で複合語をつくる。」(コンサイスカタカナ語辞典第4版。)などとされており,我が国においてもこれらの辞書類に記載されたような意味を有するものとして広く用いられている外来語であると認められる。
また,「リペア」という語は,本件審決当時の我が国の一般的な辞書類によれば,「@修理すること。修繕すること。A回復すること。取り戻すこと。」(大辞林第3版。),「修繕。修理。」(コンサイスカタカナ語辞典第4版。)などとされており,やはり我が国においてもこれらの辞書類に記載されたような意味を有するものとして広く用いられている外来語であると認められる。
そして,「セルフ」は,上記のとおり,他の外来語に付いて「自分自身の」,「自動の」などの意味の複合語を作るものであるから,「セルフリペア」とは,「セルフ」が外来語である「リペア」に付くことで形成された複合語であると認められる。そして,「セルフリペア」との複合語を構成する「セルフ」及び「リペア」の各外来語は,いずれも上記の意味を有するものとして広く用いられていることに照らすと,「セルフリペア」という語は,その意味が直ちに不明であるとはいえず,むしろ,例えば,人が物を自分自身で修理することや,物それ自体が自動的に修繕・修復されること(自己修復)などの複数の意味合いを想起するものといえる。
3 指定商品が属する分野における実情について
本件審決当時,本願商標の指定商品が属する電気通信機械器具の分野においては,タッチパネル式携帯電話に用いられるプラスチック資材の自己修復機能を,「自己修正・修復・修理(する)」という意味を有する英語の複合語で本願商標の「セルフリペア」と称呼が同一である「self-repair」と標記する記事やスマートフォン用及び携帯電話用の自己修復材料又は自己治癒コーティングに関する記事が公知であったほか,スマートフォン等の液晶画面保護フィルムであってキズの自己修復フィルム又は自己治癒コートフィルムという商品及び携帯電話等に使用可能なUV硬化型自己修復塗料又は自己治癒塗料という商品が複数種類販売されていたことが認められる。
4 本願商標の商標法3条1項3号該当性について
以上のとおり,本件審決当時,本願商標の指定商品が属する電気通信機械器具の分野においては,それ自体が自動的に修繕・修復される自己修復機能という品質を有する部品及び附属品が公知であったところ,本願商標の指定商品は,「電気通信機械器具の,自己修復機能を有する部品及び附属品(自分自身で修繕・修理するための商品を除く)」であって,まさに自己修復機能という品質を有する部品及び附属品であるから,本願商標が指定商品に使用された場合,これに接した当該分野の取引者,需要者は,「セルフリペア」という語から想起される意味合いのうち,物それ自体が自動的に修繕・修復されること(自己修復)というものを想起し,これが当該部品及び附属品の自己修復機能という品質を表しているものと認識すると認められる。
そして,本願商標は,「セルフリペア」という標準文字からなるものであるにすぎないから,指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものというほかなく,商標法3条1項3号に該当するものというべきである。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。