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平成24(行ケ)10019 審決取消請求事件(商標法第3条第1項柱書関連)

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事件の概要

 X(被告)は,「アールシータバーン」の文字を横書きして成る商標(以下「本件商標」という。)につき,指定役務を第43類「飲食物の提供」として商標登録(以下「本件商標登録」という。)を受けている商標権者である。
 Y(原告)は、本件商標登録について、商標法第3条第1項柱書等に違反することを理由として46条1項1号に基づいて商標登録の無効審判を請求した。
 特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。
 Yは、これを不服とし、提訴した。

判旨

(1) 商標法3条1項柱書は,商標登録要件として,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを規定するところ,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは,少なくとも登録査定時において,現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標,あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される。
 これを本件についてみるに,認定事実によれば,@Yは,平成21年9月17日ころから,ウェブサイトにおける情報掲載,パンフレットの配布,プレスリリース等を行い,東京都を中心に,上段に「RC TAVERN」の欧文字(やや茶系の金色)と下段に「アールシータバーン」の片仮名(黒色)を配してなるY使用商標(1)と、Y使用商標(1)の構成から「アールシータバーン」との片仮名部分を除いてなる原告使用商標(2)と(これらを併せて「Y使用商標」という)、を使用して本件店舗の宣伝,広告を行っていたこと,AYは,同年10月1日,東京都千代田区丸の内に,Y使用商標を使用し,飲食物の提供を業とする本件店舗を開店したこと,BXは,同月24日,本件商標の登録出願をし,平成22年3月26日にその登録を受けたが,現在に至るまで本件商標を指定役務である「飲食物の提供」やその他の業務に使用したことはないこと,C本件商標と、Y使用商標(1)とは,類似すること,DY使用商標は,Yが経営する飲食店「ローズ&クラウン」(Rose & Crown)の頭文字である「RC」(アールシー)と,英語で居酒屋や酒場を意味する「Tavern」(タバーン)を組み合わせた造語で,特徴的なものである上,本件店舗の宣伝,広告及び開店と本件商標の登録出願日が近接していることからすれば,Xは,Y使用商標を認識した上で,Y使用商標(1)と類似する本件商標を出願したものと考え得ること,EXは,平成20年6月27日から平成21年12月10日までの短期間に,本件商標以外にも44件もの商標登録出願をし,その登録を受けているところ,現在に至るまでこれらの商標についても指定役務やその他の業務に使用したとはうかがわれない上,その指定役務は広い範囲に及び,一貫性もなく,このうち30件の商標については,Xとは無関係に類似の商標や商号を使用している店舗ないし会社が存在し,確認できているだけでも,そのうち10件については,Xの商標登録出願が類似する他者の商標ないし商号の使用に後れるものであることが認められる。
 上記事情を総合すると,Xは,他者の使用する商標ないし商号について,多岐にわたる指定役務について商標登録出願をし,登録された商標を収集しているにすぎないというべきであって,本件商標は,登録査定時において,Xが現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標に当たらない上,Xに将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思があったとも認め難い。
 したがって,本件商標は,その登録査定時において,Xが現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標にも,将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標にも当たらず,本件商標登録は,「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に関して行われたものとは認められず,商標法3条1項柱書に違反するというべきである。
(2) この点について,審決は,上記事情をもってしても,Xの本件商標に係る使用の意思について合理的な疑義があるとはいえないと認定,判断する。しかし,登録商標が,その登録査定時において「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に当たることについては,権利者側において立証すべきところ,本件商標についてこれを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,上記認定事実によれば,本件商標登録は,Xが現に自己の業務に係る商品又は役務に使用していない商標について,将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思もなく行われたものというべきであって,上記審決の認定,判断は失当である。
 以上のとおり,本件商標は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当しないというべきであり,本件商標登録が商標法3条1項柱書に違反しないとした審決の判断には誤りがある。
 付言するに,上記認定の事実関係に照らすと,本件商標は,Y使用商標を剽窃するという不正な目的をもって登録出願されたものとして,商標法4条1項7号(公序良俗に反するおそれのある商標)に該当する余地もあるが,本件においては,同法3条1項柱書該当性の判断で足りるものと解する。

注記:下線は、判決文では引かれておりません。

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