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平成21年(行ケ)第10396号 審決取消請求事件(商標法第4条第1項第11号関連)

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事件の概要

 原告は、原告商標について商標登録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として拒絶査定不服審判を請求した。これに対し,特許庁は,請求不成立の審決をした。
 原告は、これを不服とし、知財高裁に提訴した。

判旨

1.引用商標2について

 引用商標2に係る商標権は,平成13年8月30日に商標登録出願され,平成14年8月23日に商標登録されたものであり,その存続期間満了日が平成24年8月23日である(商標法19条)ところ,その商標権者は,平成6年2月14日に設立され,平成17年10月26日午後5時に,東京地方裁判所から破産手続開始決定を受け(同年10月28日登記),平成18年5月11日に東京地方裁判所の破産手続終結決定が確定し(同年5月15日登記),同年5月15日に同社の登記簿が閉鎖されたものと認められる(甲126)。また,同社の破産手続終結決定が確定した平成18年5月11日から引用商標2に係る商標権の存続期間満了日である平成24年8月23日までの間,同社(破産管財人を含む。)及び同社からの使用許諾を受けた第三者が,当該商標を使用した又は使用すると認めるに足りる証拠はない。
 そうすると,本願商標の出願時である平成20年5月27日,拒絶査定時である平成21年2月24日及び審決時である平成21年10月28日において,引用商標2がその正当な権利者(商標権者又はこれから使用許諾を受けた者)によって使用される可能性は極めて低いものと認められ,引用商標2と本願商標との間で商品の出所についての混同を生ずるおそれはないものというべきである。
 被告は,商標法4条1項11号にいう先願の「他人の登録商標」は,後願の同一又は類似商標の査定時又は審決時において,現に有効に存続しているものであれば足り,現実に使用されていることを必要とするものではなく,また,商標権者が破産前に引用商標2の使用を許諾した第三者によって同商標が使用されている可能性や,将来,第三者が引用商標2に係る商標権を承継して使用する可能性も否定できないから,引用商標2が本願商標の査定時又は審決時において,現に有効に存続していた以上,本願商標と引用商標2との類否判断に影響を及ぼすものではないと主張する。
 しかし,引用商標2に係る商標権者については,本願商標の出願登録前に破産手続終結決定が確定しており,当該商標権の存続期間満了日までの間,引用商標2がその正当な権利者(商標権者又はこれから使用許諾を受けた者)によって現実に使用される可能性は極めて低いものと認められるのであるから,引用商標2と本願商標との間で商品の出所についての混同を生ずるおそれはないものといえる。したがって,被告の主張は採用することができない。
 以上のとおり,本願商標は,引用商標2との関係においては,商品の出所についての誤認混同のおそれのない非類似の商標であるから,商標法4条1項11号に該当するものではなく,この点に関する原告主張の取消事由3には理由がある。

2.本願商標と引用商標1との類否判断について

 本願商標と引用商標1との外観,観念,称呼についての比較検討の結果を踏まえて,全体的に考察すると,両商標は,称呼について共通する場合があるものの,外観において大きく相違し,観念においても比較できないものと認められるところ,「商標の外観,観念または称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,従って,右三点のうちその一において類似するものでも,他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって,なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標と解すべきではない。」(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)といえるから,本願商標がその図形部分と文字部分とが常に一体として使用されているという取引の実情も考慮すれば,本願商標を使用した商品が引用商標1を使用した商品とその出所につき誤認混同を生ずるおそれは極めて少ないものといえる。
 したがって,審決が,本願商標と引用商標1とが称呼において共通する場合があることのみを重視し,両商標が類似すると判断したことは誤りであり,この点に関する原告の取消事由3には理由がある。

3.結論

 以上によれば,原告主張の取消事由3は理由があり,本願商標が引用商標1及び2に類似し商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断は,誤りといわなければならない。
 よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。

注記:下線は、判決文では引かれておりません。実務上、重要と思われる部分に引いております。

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