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平成19年(行ヒ)第223号 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(上告人)は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成り,指定商品を商標法施行令別表第1の第28類の区分に属する「土人形および陶器製の人形」(以下「本件指定商品」という。)とする登録商標(以下,この商標を「本件商標」といい,その商標登録を「本件商標登録」という。)の商標権者である。
 Y(被上告人)は,本件商標登録が法4条1項11号等の規定に違反してされたものであるとして,法46条1項に基づき,本件商標登録を無効とすることについて審判を請求した。前記審判請求では,本件商標は、「つゝみ」の太文字を横書きして成る商標(以下「引用商標1」という。)及び「堤」の太文字1字から成る商標(以下「引用商標2」といい,引用商標1と併せて「引用各商標」という。)のいずれにも類似しないから法4条1項11号に該当せず,Yの主張するその余の無効理由も認められないとして,審判請求を不成立とする審決がされた(以下,この審決を「本件審決」という。)。
 Yは、これを不服として、知財高裁に提訴した。高裁では,本件商標について法4条1項11号該当性を否定した本件審決の判断部分は誤りであるとして,本件審決の取消しを求めるYの請求を認容した。
 Xは、これを不服として上告した。

判旨

(1) 法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。
(2) これを本件についてみるに,本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。また,前記事実関係によれば,引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者であるYが本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。さらに,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能がないということはできない。
 このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。
(3) そして,前記事実関係によれば,本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。
  以上によれば,本件商標と引用各商標が類似するとした原審の判断には,商標の類否に関する法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

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