事件の概要
X(原告)は,第32類「レモンを加味した清涼飲料,レモンを加味した果実飲料」を指定商品として,平仮名「ほっと」と片仮名「レモン」の文字を上下二段に横書きした文字部分と,上辺中央を弓形に膨らませ,4隅を丸く描いた四角形状の輪郭線と、からなる商標(以下、「本件商標」という。)の商標権者である。
訴外Aらは,本件商標は,自他商品識別標識としての機能を果たし得ない(商標法3条1項3号)等として,登録異議の申立てをした。前記登録異議の申立ては,特許庁で審理され,特許庁は,本件商標の商標登録を取り消す旨の決定をした(以下「決定」という。)。その理由は,要するに,本件商標は,商標法3条1項3号に該当し,また,本件商標について使用により自他商品識別力を獲得したものと認められないから,同条2項に該当しないとするものである。
Xは、これを不服とし、知財高裁に提訴した。
判旨
1.本願商標
本件商標は,@赤色で彩色された,丸みを帯びた太字の書体で平仮名「ほっと」と片仮名「レモン」の文字を上下二段に,横書きした文字部分(本件文字部分),及びA赤色で彩色された,上辺中央を弓形に膨らませ,4隅を丸く描いた四角形状の輪郭線(本件輪郭部分)からなる商標である。
2.判断
本件文字部分のうち,片仮名「レモン」部分は,指定商品(第32類「レモンを加味した清涼飲料,レモンを加味した果実飲料」)を含む清涼飲料・果実飲料との関係では,果実の「レモン」又は「レモン果汁を入れた飲料又はレモン風味の味付けをした飲料」であることを意味し,また本件文字部分のうち,平仮名「ほっと」部分は,上記指定商品との関係では,「熱い」,「温かい」を意味すると理解するのが自然である。また,本件輪郭部分については,上辺中央を上方に湾曲させた輪郭線により囲み枠を設けることは,清涼飲料水等では,比較的多く用いられているといえるから,本件輪郭部分が,需要者に対し,強い印象を与えるものではない。さらに,「ほっとレモン」の書体についても,通常の工夫の範囲を超えるものとはいえない。
この点,Xは,「ほっと」は,「人をほっとさせる」「人がほっとしたいとき」を意味し,「温かい」を意味するものではないかのような主張をする。しかし,@「温かいレモン風味の味付け等をした飲料」を総称する名称(称呼)としては,「ほ」「っ」「と」「れ」「も」「ん」があり,それ以外の名称(称呼)を一般的に確認することはできないこと,A「温かいレモン風味の味付け等をした飲料」としての「ほ」「っ」「と」「れ」「も」「ん」の表記は,「ホットレモン」のみならず片仮名と平仮名の組合せである「ほっとレモン」も用いられていたこと,B「レモン」以外の果実等の風味を付加し,温かい状態で飲まれることを想定した清涼飲料水等においても,平仮名「ほっと」の文字が使用される例は,少なくないこと等に照らすならば,Xの上記主張を採用することはできない。すなわち,本件に現れたすべての証拠によるも,本件商標について,「熱い」,「温かい」との観念が生じることを否定する事実は認められない。
そうすると,「ほっとレモン」との文字及びそれを囲む輪郭部分の組合せからなる本件商標は,本件商標の指定商品(「レモンを加味した清涼飲料,レモンを加味した果実飲料」)との関係では,商標法3条1項3号所定の「商品の・・・品質,原材料・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというべきである。
以上のとおり,商標法3条1項3号に該当しないとするXの主張は,採用できない。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。