事件の概要
X(原告)は,「御用邸」の文字を横書きして成る商標(以下「本件商標」という。)につき,指定商品を商標法施行令別表の第30類「菓子及びパン」として商標登録(以下「本件商標登録」という。)を受けている商標権者である。
Y(被告)は、本件商標登録について、商標法第4条第1項第7号に該当することを理由として46条1項1号又は5号に基づいて商標登録の無効審判を請求した。
特許庁は,「本件商標登録を無効とする。」との審決をし,その謄本はXに送達された。
Xは、これを不服とし、提訴した。
判旨
弁論の全趣旨によれば,「御用邸」とは皇室の別邸を意味し,天皇又は皇族の静養等に用いられるもので,現在,那須御用邸,葉山御用邸,須崎御用邸の3つがあること,御用邸は国有財産であって,行政財産のうち皇室用財産に属し,宮内庁が管理するものであることが認められる。「御用邸」が皇室の別邸であることは広く知られており,「御用邸」の文字には,皇室と関係があるかのように感じさせる効果があり,顧客誘因力がある。そうすると,皇室と何らの関係もない者が,自己の業務のために指定商品について「御用邸」の文字を独占使用することは,皇室の尊厳を損ね,国民一般の不快感や反発を招くものであり,相当ではない。このことは,本件商標の登録査定時である平成7年11月16日においても,現在でも同様である。したがって,本件商標は,その登録査定時において既に,指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものであったと認めることかできる。そうすると,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であり,その登録は,7号に違反してされたものであるから,商標法46条1項1号により登録を無効とした審決に誤りはない。
Xは,他にも「御用邸」の文字からなる商標や「御用邸」の文字を含む商標が登録されていること,「御所」の文字からなる商標や「御所」の文字を含む商標が登録されていることを主張するが,それらの商標登録に瑕疵があるか否かは,本件の判断とは別論であるから,理由がない。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。