事件の概要
X(原告)は、「ももいちご」の 文字と、「百壱五」の文字と、を2段併記して成る商標(以下「本件商標」という。)につき,指定商品を第31類「いちご」とする登録商標(以下「本件商標登録」という。)について商標権(以下「本件商標権」という。)を有する商標権者である。
Y(被告)は,不使用を理由に本件商標登録の取消しを求めて審判請求をした。
これに対し、特許庁は,「本件商標登録を取り消す。」旨の審決をした。
Xは、これを不服とし、提訴した。
判旨
(2) 本件商標と使用商標2との社会通念上の同一性の有無
本件商標の通常使用権者であるフルーツキングミズノ(梅田店)は,「ももいちご」「百壱五」の文字が入った商品タグを用いていたところ,同商品タグでは,「百壱五」の文字が「ももいちご」の文字に比べて小さい上,他の文字(「登録第4323578号」等)も使われるなど,本件商標において「ももいちご」「百壱五」の文字をほぼ同じ大きさで二段に並べたものとは,使用態様が異なる。
しかし,不使用商標登録取消審判における商標の使用とは,商標法50条1項が明示するように,必ずしも登録された商標と同一の商標の使用でなくても社会通念上同一と認められる商標の使用であれば足りると解されている。これは,現実の社会では,願書添付の商標見本と厳密な意味での同一の商標を,営業上絶えず同じ態様で固定して用いることはむしろまれであり,登録商標の使用の解釈を社会通念に合致するように行う必要があるためである。
そこで検討するに,上記商品タグにおいて,文字の色や大きさから,「ももいちご」の部分が最も大きな自他識別能力を有することは明らかであり,「佐那河内の」の部分は,それに次いで自他識別能力を有するといえる。他方で,文字の大きさや内容からすれば,「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」「百壱五」の部分は,いずれも自他識別能力は非常に小さいといえる。
しかし,Xは,「百壱五」の部分につき,単に登録要件を充足するために本件商標に付加したものであり,客観的にみても,本件商標において漢数字である「百壱五」の部分は,「ひゃくいちご」のほか「ももいちご」とも一応読み得るものであり,ここから,数字の100と1と5,又は何らかの「いちご」との観念が生じ得るものの,あくまで平仮名の「ももいちご」を補足する部分であり,「百壱五」の部分自体が顕著な自他識別能力を有することは期待されていないと解されることからすれば,「ももいちご」「百壱五」の両方の文言が,文字の変更や欠落などなく,共に用いられていれば,字体や字の大きさに違いがあるとしても,本件商標を表す「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」も表示されていることも併せ考慮すると,社会通念上,本件商標と同一の商標が使用されていると解すべきである。
そして,本件での商品タグにおいて,「百壱五」の文字が小さいとしても,判読できないほど小さいわけではなく,他の文言が入っていても,「ももいちご」「百壱五」の両方の文言が上下二段に並べて用いられているものである。
以上からすれば,写真の赤丸で囲まれた商品タグにおいて,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているものと認めるのが相当である(なお,その写真内容からして,本件商標の指定商品である第31類「いちご」について使用されていることは明らかである。)。
(3) 小括
以上のとおり,本件においては,Xから本件商標につき通常使用権の設定を受けたフルーツキングミズノ(梅田店)が,少なくとも取消審判請求の登録日(平成22年8月16日)前3年以内である平成19年,平成20年,平成21年の各12月31日に,写真の赤丸で囲まれた商品タグ(使用商標2)を使用して,指定商品の「いちご」に該当する「ももいちご」を販売していたものということができる。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。