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平成25(行ケ)10126 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(被告)は,左端に,青色の略円形図形内に白抜きで,「快席」の文字を小さく,その下部に「吉前」の文字を大きく,その下部に「よしざき」の文字を小さく,それぞれ書してなり,その右側に鬼の子供と思しき図形を描き,その右に橙色で大きく「きょロッケ」の文字を配し,さらにその右側には略おにぎり形状の頭部を有する擬人化した人形の図形を描いてなる,指定商品を第29類「魚のすり身と野菜を主材とする揚げ物」とする登録商標(以下,この商標を「本件商標」といい,その商標登録を「本件商標登録」という。)の商標権者である。
 Y(原告)は,本件商標登録が法4条1項11号等の規定に違反してされたものであるとして,法46条1項に基づき,本件商標登録を無効とすることについて審判を請求した。前記審判では,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決がされた(以下「本件審決」という。)。
 Yは、これを不服として、高裁に提訴した。

判旨

1 本件商標

 本件商標の「吉前」 及び「よしざき」の文字部分については,その構成態様に照らせば,下段の「よしざき」の平仮名は,上段の「吉前」の文字の読みを特定するものと理解される。
 そして,本件商標を一連・全体としてみれば,何ら特定の観念を生ずるものではなく,「カイセキ ヨシザキ キョロッケ」と一連に称呼するものと認められる。
 これに対し,本件商標の構成中,「きょロッケ」の文字は,本件商標のほぼ中央部に橙色でひときわ大きな文字で極めて読みとりやすく表示され,それ自体が成語ではなく一種の造語と解されることから,この部分が独立して看る者の注意を引くように構成されている。しかも,本件商標の構成中,左端の略円形図形及び同図形内の「快席 吉前 よしざき」の文字は子鬼の図形を挟んで離れて配置され,また,「きょロッケ」の文字部分の両側に配置された子鬼の図形及び略おにぎり形状の頭部を有する擬人化した人形の図形には,いずれも出所識別標識としての称呼,観念を生じることはないと見るのが相当である。そうすると,「きょロッケ」の文字部分と本件商標の他の構成部分とは,それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえず,本件商標においては,「きょロッケ」の文字部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識としての印象を与えるものといえるから,これを要部と認めるべきである。そして,「きょロッケ」の文字部分からは,特に何らの観念を生ずるものではなく,「きょロッケ」の文字部分に相応して「キョロッケ」の称呼を生じる。

2 引用商標

 引用商標は,「ギョロッケ」の片仮名と「魚ロッケ」の文字を上下2段に書してなり,その構成態様に照らせば,上段の片仮名は,下段の文字の読みを特定するものと理解され,その構成文字に相応して「ギョロッケ」の称呼を生じる。また,「ギョロッケ」の文字からは,特に何らの観念を生じさせるものではなく,「魚ロッケ」の文字からも特に何らの観念も生じないか,または「魚」
の文字から,魚に何らかの関わりのあるものという程度の観念を想起させるものといえる。

3 本件商標と引用商標との類否

 以上を踏まえて,本件商標と引用商標との類否を検討する。
 まず,本件商標の指定商品である「魚のすり身と野菜を主材とする揚げ物」と,引用商標の指定商品中の第29類「肉製品,加工水産物」及び第30類「ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,べんとう,ラビオリ」とは,同一とはいえないが,類似する商品であると認められる。
 そして,本件商標を一連・全体として見て,これを引用商標と対比すると,両者は外観が著しく異なることが明らかであり,本件商標は特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標は魚に関するものという観念が生ずるか,または特定の観念を生じないものであるから,両者は観念において相違するかあるいはこれを比較することができないものである。また,称呼は構成音及び構成音数が明らかに相違し,一連に称呼した場合,両者は全く異なるといえる。
 次に,本件商標の要部たる「きょロッケ」の文字部分と引用商標とを対比すると,「きょロッケ」の文字部分と,引用商標とは,綴り,書体,色,上下2段に表示されているか否かなどの構成が異なり,外観において相違する。また,「きょロッケ」の文字部分は特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標は魚に関するものという観念が生ずるか,または特定の観念を生じないものであるから,両者は観念において相違するかあるいはこれを比較することができないものである。もっとも,「きょロッケ」はその文字部分に相応する「きょろっけ」の称呼を生じ,引用商標は,その構成文字に相応する「ぎょろっけ」の称呼を生ずるものであるから,両者の称呼は,「きょ」と「ぎょ」において相違するだけであり,比較的近似するものであるといえる。しかし,語頭音である「きょ」と「ぎょ」の称呼上の差異は清音と濁音の違いであり,比較的容易に認識できるものであるといえる。
 さらに,取引の実情として,外観や観念よりも称呼によって商品の出所を識別しているなど,称呼上の識別性が外観及び観念上の識別性を上回っているような特段の事情も認められない。
 そうすると,本件商標の要部たる「きょロッケ」の文字部分と引用商標とは,外観が異なる上,観念については相違するかまたは比較することができないものであって,称呼においても上記の程度に区別できるから,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合判断すると,両商標を取り違えて商品の出所の誤認混同を生ずるおそれは考えられず,両者は類似しないものというべきである。
 以上によれば,本件商標と引用商標とは,同一又は類似の商品に使用された場合であっても,商品の出所につき誤認混同を生じるおそれはないというべきである。

注記:下線は、判決文では引かれておりません。実務上、重要と思われる部分に引いております。

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