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平成23(行ケ)10174 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(原告)は、「炭都饅頭」の4文字を江戸文字の書体で縦1行にまとまりよく記して成る商標(以下「本願商標」という。)につき,第30類「饅頭」を指定商品とする商標登録出願(以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,拒絶査定不服審判を請求した。
 これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決という。)をした。
 Xは、これを不服とし、提訴した。

判旨

1 本願商標は漢字である「炭都饅頭」の4文字を江戸文字の書体で縦1行にまとまりよく記して成る外観を有する一方,引用商標は大文字の欧文字である「TANTO」の5文字と片仮名である「タント」の3文字とを,ゴシック体ないしこれに類する書体で,横2段書きして成る外観を有するから,両商標の外観は大きく異なる。
 被告は本願商標に使用されている文字の書体はありふれたものであり,取引者や需要者は筆書き風の書体で記したものと認識するに止まる旨を主張するが,江戸文字は,骨太で威勢のいい江戸歌舞伎の感性を意匠化すべく考案され,千客万来を願って,内へと入る運筆で枠一杯に隙間なく書かれることを特徴とするもので,書体自体が見る者に強い印象を与えるためにデザインされたものである。そうすると,さほど注意力が高くない需要者や取引者にとっても,本願商標が通常の筆書きによって記すよりも強い印象を与えるということができ,被告の上記主張を採用して,両商標の外観の相違を小さく評価することはできない。
2 本願商標の構成のうち「饅頭」の部分は,和菓子の一種を示す普通名称であって,「饅頭」の文字だけでは自他商品識別力が希薄であることは否定できないが,前記1のとおり,本願商標は縦1行にまとまりよく記して成る外観を有し,本願商標を構成する文字の書体も,文字の大きさも相互にほぼ同一であって,例えば「炭都」の部分が特に強調された体裁を有するものではない。
 そうすると,本願商標からはまず「タントマンジュウ」との称呼が生じるというべきである。
 他方,引用商標からは,その構成文字,とりわけ片仮名部分に相応して,「タント」との称呼が生じる。
 そうすると,本願商標と引用商標とは,生じる称呼が異なるということができる。
3 前記2のとおり,「炭都」の部分のみが本願商標の要部ではないところ,福岡県田川市のホームページ等では炭鉱で栄えた都市を意味する語として「炭都」が使用されていることに照らすと,本願商標からは「炭鉱で栄えた都市にちなんだ饅頭」程度の観念が生じるし,仮に九州の三池炭鉱付近の都市が石炭の産出で繁栄した歴史を知らない者であったとしても,「石炭を産出する都市にちなんだ饅頭」や少なくとも「炭の生産をする都市にちなんだ饅頭」程度の観念は生じると認められる。加えて,Xは饅頭の皮の材料に竹炭を加え,皮を意図的に黒くして,石炭を連想させる外観の饅頭に「炭都饅頭」の商標を付して販売しており,その場合には尚更,Xの上記商品に接した需要者ないし取引者は,「炭鉱で栄えた都市にちなんだ饅頭」程度の観念を生じると容易に認めることができる。
 他方,引用商標からは,沢山の意味を持つ俗語「たぁんと」,「たんと」から来る観念が生じるか,あるいはイタリア語を知っている需要者,取引者にとってはその欧文字から「沢山の」という観念が生じると認められる。
 そうすると,本願商標から生じる観念と引用商標から生じる観念は明らかに異なる。
4 結局,本願商標と引用商標とは,その外観も大きく異なり,両商標から生じる称呼も観念も異なる(あるいは,称呼が共通する場合があるとしても,外観,観念の違いが称呼の共通を大きく凌駕する。)から,両商標は類似しない。
 そうすると,審決がした両商標の類否判断は誤りであり,指定商品の類否を判断するまでもなく,本願商標は商標法4条1項11号に当たらない。 

注記:下線は、判決文では引かれておりません。

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