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平成23(行ケ)10287 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(原告)は、上段に概ね青色(空色)のゴシック体の英字大文字で「SPORTS LABORATORY」,下段に同色のゴシック体風の英字で「Sportsman.jp」と横2段書きして成る商標(以下「本願商標」という。)につき,第35類「被服の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,腕時計・スポーツウォッチ・ストップウォッチの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,スポーツシューズその他の履物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等を指定役務とする商標登録出願(以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,拒絶査定不服審判を請求した。
 これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決という。)をした。
 Xは、これを不服とし、提訴した。

判旨

(1) 本願商標は,上段に概ね青色(空色)のゴシック体の英字大文字で「SPORTS LABORATORY」,下段に同色のゴシック体風(ただし,縦方向の線(部分)が横方向の線(部分)よりも明らかに太くなっている。)の英字で「Sportsman.jp」(第1字のみが大文字でその余はいずれも小文字)と横2段書きして成り,下段部分の各文字は上段部分の各文字の概ね4倍程度の大きさで記された外観を有する。また,上段部分の各文字の間隔はやや広いが,下段部分の各文字の間隔はやや狭くなっていて,下段部分がこれを見る者に緊密な,やや強調された印象を与えるものである。
(2)ア 引用商標1は,上部に黒色のゴシック体の英字大文字による横書きで「SPORTSMAN」(ただし,6字目の「S」と7字目の「M」の間隔がわずかに広くなっている。),その下部の全体の4分の3強を占める部分の左右方向中央付近に同色の明朝体ないしこれに類する書体の片仮名による縦書きで「スポーツマン」と記して成る外観を有する。なお,上部の「SPORTSMAN」部分よりも下部の「スポーツマン」部分の方が,各文字が大きくなっている。
 そうすると,本願商標と引用商標1とは,その外観が異なるというべきである。
イ 前記(1)のとおり,本願商標の構成のうち下段部分「Sportsman.jp」がその余の部分と明らかに区別された外観を有しているから,この部分が本願商標のうちで需要者,取引者に対し,出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であって,本願商標の要部は上記「Sportsman.jp」の部分であるということができる。そうすると,構成文字に従って,この部分から,「スポーツマンドットジェーピー」ないし「ドット」を捨象した「スポーツマンジェーピー」の称呼が生じる。また,上記「Sportsman.jp」はこれを見る者にインターネットのドメイン名を想起させるところ,「.jp」はドメイン名において,当該ドメイン名の使用者の所在地等が含まれる国が日本であることを示す表記(国別トップレベルドメイン,カントリーコードトップレベルドメイン,ccTLD)であることが,インターネットが既に普及した審決当時の需要者・取引者において広く知られていることは明らかである。そうすると,さらに「.jp」の部分を省いた「Sportsman」の部分が本願商標の要部であるということも可能であるし,あるいは,上記「Sportsman.jp」の部分から,これを見る者によっては,「.jp」を省略した部分に着目して,「スポーツマン」の称呼も生じるというべきである。
 他方,引用商標1は,その上部部分も下部部分も同一の意義を有する語で構成されているから,その構成文字に従って,「スポーツマン」の称呼が生じる。
 そうすると,本願商標と引用商標1とは,共通の称呼が生じることがあるか,又は本願商標の称呼のうちで主要な部分を占める「スポーツマン」の称呼の部分で共通するから,両商標の称呼は類似する。
ウ 前記イのとおり,本願商標の要部は「Sportsman.jp」の部分又は「Sportsman」の部分にあるところ,後者からは「運動競技の選手,スポーツ選手,スポーツの得意な人」との観念が生じるし,前者からは「運動競技の選手,スポーツ選手に関連するインターネットのサイト,スポーツの得意な人に関連するインターネットのサイト」程度の観念が生じる。
 他方,引用商標1の構成部分である「SPORTSMAN」(上部)も「スポーツマン」(下部)も「運動競技の選手,スポーツ選手,スポーツの得意な人」という同一の意義を有する語であって,引用商標1からはかかる観念が生じる。
 そうすると,本願商標と引用商標1とは,共通の観念が生じるか,又は両商標から受ける印象に大きな差はなく,生じる観念が重なり合うのであって,観念が類似する。
エ 以上のとおり,本願商標と引用商標1とは,外観が異なるものの,これらから生じる称呼,観念が類似するから,外観の類否まで判断を要せずに(もともと本願商標及び引用商標1とも文字商標で,その文字の書体や配置,配色などにおいて顕著な識別力を有するものではないので,外観の類否は,商標の類否判断において重要な要素ではない。このことは,後記(3),(4)で判断する引用商標2,3についても同様である。),両商標は類似するというべきである。
(3)ア 引用商標2は,上段に黒色の明朝体の英字大文字で「SPORTSMAN」,下段に同色の明朝体の片仮名で「スポーツマン」と横2段書きして成る外観を有する。
 そうすると,前記(1)のとおりの本願商標の外観にかんがみると,本願商標と引用商標2とは,その外観が異なる。
イ 引用商標2は,その上部部分も下部部分も同一の意義を有する語で構成されているから,その構成文字に従って,「スポーツマン」の称呼が生じる。
 そうすると,引用商標1と同様に,本願商標と引用商標2とは,共通の称呼が生じることがあるか,又は本願商標の称呼のうちで主要な部分を占める「スポーツマン」の部分で共通するから,両商標の称呼は類似する。
ウ 引用商標2からも,引用商標1と同様に,「運動競技の選手,スポーツ選手,スポーツの得意な人」との観念が生じる。
 そうすると,本願商標と引用商標2とは,共通の観念が生じるか,又は両商標から受ける印象に大きな差はなく,生じる観念が重なり合うのであって,観念が類似する。
エ 以上のとおり,本願商標と引用商標2とは,外観が異なるものの,これらから生じる称呼,観念が類似するから,外観の類否について判断するまでもなく,類似するというべきである。
(4)ア 引用商標3は,黒色の明朝体の英字大文字で「SPORTS MAN」,(2つの語に分かれている。)と横書きして成る外観を有する。そうすると,本願商標と引用商標3とは,その外観が異なる。
イ 引用商標3からは,その構成文字に従って,「スポーツマン」の称呼が生じ,引用商標1と同様に,本願商標と引用商標3とは,共通の称呼が生じることがあるか,又は本願商標の称呼のうちで主要な部分を占める「スポーツマン」の部分で共通するから,両商標の称呼は類似する。
ウ 引用商標3からも,引用商標1と同様に,「運動競技の選手,スポーツ選手,スポーツの得意な人」との観念が生じる。
 そうすると,本願商標と引用商標3とは,共通の観念が生じるか,又は両商標から受ける印象に大きな差はなく,生じる観念が重なり合うのであって,観念が類似する。
エ 以上のとおり,本願商標と引用商標3とは,外観が異なるものの,これらから生じる称呼,観念が類似するから,外観の類否の判断をするまでもなく,類似するというべきである。
(5) 結局,本願商標と引用商標1ないし3は類似するから,審決がした商標の類否判断に誤りはない。

注記:下線は、判決文では引かれておりません。

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