事件の概要
X(原告)は、黄色の着色が施された大きな円のほぼ中央上部の左右に,2つの小さな黒色の縦長楕円形の点を,人の目のように描き,その下方に下向きの黒色の円弧を人の口のように描き,全体が人の笑顔のように描いた図柄から成る商標(以下「本願商標」という。)につき,第24類「敷布,布製身の回り品,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,織物製トイレットシートカバー,カーテン,テーブル掛け,布製ラベル」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とする登録商標(以下「本件登録商標」という。)について商標権を有する商標権者である。
Y(被告)は,本件商標登録が,その指定商品中,第24類「敷布,布製身の回り品,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服,仮装用衣服」について,商標法4条1項11号に該当するとして,異議の申立てをした。特許庁は,「指定商品中,第24類『敷布,布製身の回り品,布団,布団カバー,まくらカバー,毛布』及び第25類『被服,仮装用衣服』についての商標登録を取り消す。」との決定をした(以下「本件決定」という。)。
Xは、これを不服とし、提訴した。
判旨
(1) 本件登録商標
本件登録商標は,黄色の着色が施された大きな円のほぼ中央上部の左右に,2つの小さな黒色の縦長楕円形の点を,人の目のように描き,その下方に下向きの黒色の円弧を人の口のように描き,全体が人の笑顔のように描いた図柄である。装飾を排したシンプルな図柄である点に特徴がある。
本件登録商標からは,人の笑顔等に関連した観念が生じ,またそのような称呼が生じる余地がある。
(2) 引用商標
引用商標1は,大きな円の中央上部の左右に,2つの小さな黒色の縦長楕円形の点を人の目のように描き,その下方に下向きの黒色の円弧を人の口のように描き,全体が人の笑顔のように描いた図柄である。また,引用商標2は,大きな円の中央上部の左右に,2つの小さな黒色の縦長楕円形の点を人の目のように描き,その下方約3分の2に下向きの黒色の円弧を人の口のように描き,全体が人の笑顔のように描いた図柄である。引用商標も,装飾を排したシンプルな図柄である点に特徴がある。
引用商標からは,人の笑顔等に関連した観念が生じ,またそのような称呼が生じる余地がある。
(3) 本件登録商標と引用商標の対比
本件登録商標と引用商標は,いずれも,大きな円の中央上部の左右に,2つの小さな縦長楕円形の点を人の目のように描き,その下方に下向きの円弧を人の口のように描き,全体が人の笑顔のように描いた図柄であり,外観,観念及び称呼において共通するから,類似の商標というべきである。
本件登録商標と引用商標は,円図形が,本件登録商標では,黄色に着色されているのに対し,引用商標では,黒い線で描かれている点で異なる。また,本件登録商標と引用商標1とは,目のように描かれた縦長楕円形の位置,口のように描かれた弧線の位置,弧の角度,太さにおいて異なり,本件登録商標と引用商標2とでは,目のように描かれた縦長楕円形の位置,大きさ,口のように描かれた弧線の位置,長さにおいて異なる。
しかし,本件登録商標と引用商標の上記相違は,克明詳細に観察してようやく認識できる程度の微差であり,取引者・需要者が,その相違をもって出所を識別することができるほどの相違とはいえず,出所の混同を来すものといえる(なお,円図形内に施された色彩の有無も,両商標による外観,観念を大きく変えるほどのものとはいえない。)。
以上によると,本件登録商標と引用商標は,外観,観念及び称呼において類似し,本件登録商標は引用商標に類似する商標であるといえる。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。