事件の概要
X(原告)は、上段の欧文字からなる「CHOOP」の文字と下段の片仮名からなる「シュープ」の文字とからなり、欧文字の左から4番目の文字は花柄様に描かれた図形により白抜きされて成る商標(以下「本願商標」という。)につき,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とする登録商標(以下「本件登録商標」という。)について商標権を有する商標権者である。
Y(被告)は,本件商標登録が,商標法4条1項11号に該当するとして,商標登録の無効審判の請求をした。特許庁は,これを審理し、「本件商標登録を無効とする。」との審決をした(以下「本件審決」という。)。
Xは、これを不服とし、提訴した。
判旨
法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情に基づいて全体的に考察すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。そこで,上記の観点から,本件商標と引用商標の類否について検討する。
(1) 本件商標と引用商標は,「シュープ」の称呼を生じ得る点で称呼において類似するものの,外観において相違する。また,特定の観念は生じないと解されるから,観念において類否を判断することはできない。また,本件商標に係る取引の実情をみると,Xは,商標「CHOOP」について,長期にわたり,指定商品等への使用を継続してきたこと,雑誌,新聞,テレビや飛行機内での番組提供,テレビCM等を利用して,宣伝広告活動を実施してきたこと,ファションブランド誌や業界誌にも紹介されていること,「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層を開拓してきたこと,その結果,同商標は,ティーン世代の需要者に対して周知となっていることが認められる。他方,引用商標を構成する「Shoop」の欧文字は,「セクシーなB系ファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層を開拓してきた,そして,商標「CHOOP」の使用された商品に関心を示す,「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」を好む需要者層と,引用商標の使用された商品に関心を示す,いわゆる「セクシーなB系ファッション」を好む需要者層とは,被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)において相違することが認められる。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観が明らかに相違し,取引の実情等において,Xによる「CHOOP」商標が広く周知されていること,需要者層の被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)が相違することに照らすならば,本件商標が指定商品に使用された場合に取引者,需要者に与える印象,記憶,連想は,引用商標のそれとは大きく異なるものと認められ,称呼を共通にすることによる商品の出所の誤認混同を生じるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標と引用商標は類似しないと判断すべきである。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。