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平成23(行ケ)10004 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(原告)は、中央から右端にかけて,やや大きな「アイテック阪急阪神」の文字と小さな「株式会社」の文字が黒色で横書きされ,その左側に,「h」の欧文字を2つ重ねたものと理解することができるか,あるいは,上下の波形のようにも見える青色のやや大きな図形を表し,その図形の左下に,青色で右に少し傾いた小さな「i−TEC」の二重文字を横書きしてなる商標(以下「本願商標」という。)につき,第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機システムの企画・設計・作成・構築及び保守,インターネットにおけるウェブサイトの作成又は保守及びこれらに関する助言,電子計算機システムの設計・作成又は保守に関する指導及び助言,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務とする商標登録出願(以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,拒絶査定不服審判を請求した。
 これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決という。)をした。
 Xは、これを不服とし、提訴した。

判旨

1 判断基準

 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,そのためには,まずその外観,観念,称呼の対比を基準にして需要者等に与える印象,記憶,連想等を総合し,要部が抽出できるならばそれに基づいて考察すべく,その商品又は役務の取引の実情を明らかにし得る場合には,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。

2 本願商標の要部

 本願商標は,中央から右端にかけて,やや大きな「アイテック阪急阪神」の文字と小さな「株式会社」の文字が黒色で横書きされ,その左側に,「h」の欧文字を2つ重ねたものと理解することができるか,あるいは,上下の波形のようにも見える青色のやや大きな図形を表し,その図形の左下に,青色で右に少し傾いた小さな「i−TEC」の二重文字を横書きしてなるものである。そして,@「アイテック阪急阪神」の文字が,同じ大きさで一体として記され,中央の大きな面積を占めていること,他方で,A「株式会社」の文字は小さく,会社組織を示す一般的な語であること,B「i−TEC」の文字は,小さく左下隅に配されており,しかも,「アイテック」の称呼が生じることからすると,中央の「アイテック阪急阪神」の文字部分のうち「アイテック」の部分を欧文字で表すものとして,「アイテック阪急阪神」の文字部分に従属するものと理解されること,C図形部分も一見しただけではいかなる意味を持つか理解しにくいものであることからすると,本願商標に接した需要者等は,中央の「アイテック阪急阪神」の文字部分を一体のものとして強く意識することが多いものと認められる。
 また,「アイテック阪急阪神」の文字部分からは,「アイテックハンキュウハンシン」の称呼を生じるが,この程度であれば,商標として冗長というほどではない。加えて,「i−TEC」の文字や「アイテック」の文字部分は造語ではあるものの,特徴的な外観,観念,称呼を有するものではない。そして,「i」がインフォメーションの頭文字として多方面で使用される欧文字であり,「TEC」もテクノロジーなる科学技術一般を指す単語を表す3文字の欧文字として思い付きやすく語呂のよい文字群であって我が国で広く使用されていることから,「i−TEC」の文字はこの2つを結び付けたにすぎないものとして,識別力において強い印象を与えないのに対して,「阪急阪神」の文字部分は,関西を本拠とする著名な私鉄である阪急と阪神を中心とし,近時村上ファンドの動きにより実現した企業グループのホールディングスとして世間の耳目を集めた阪急阪神グループの略称であって,特に強い印象を与えるものである。
 このような本願商標においては,「アイテック阪急阪神」の文字部分が一体として把握され,強い自他商品識別力を有するものと理解し,そこに要部を認めるのが自然であり,「i−TEC」の文字や「アイテック」の文字部分だけを抽出して他人の商標との類否を判断するのは相当ではない。次の3における判断においては,この要部を中心に対比するのが相当である。

3 外観,観念,称呼による引用商標との対比

(1) 外観
 本願商標は,前記のとおり,中央から右端にかけて,やや大きな「アイテック阪急阪神」の文字と小さな「株式会社」の文字が黒色で横書きされ,その左側に,「h」の欧文字を2つ重ねた,あるいは,上下の波形のように見える青色のやや大きな「図形」を表し,その「図形」の左下に,青色で右に少し傾いた小さな「i−TEC」の二重文字を横書きしてなるものであるのに対し,引用商標1は,「アイテック株式会社」の文字を横書きしてなるもの,引用商標2は,「ITEC」の欧文字を一連に横書きしてなるものであり,引用商標1及び2には少なくとも「阪急阪神」に相当する部分がない。したがって,本願商標と引用商標1とは「アイテック」と「株式会社」の文字部分が,本願商標と引用商標2とは「I(i)」と「TEC」の欧文字部分が共通するものの,全体として本願商標と引用商標1及び2との間で外観は相違するといえる。
(2) 観念
 「アイテック」,「i−TEC」及び「ITEC」は造語であって前記2で示したように識別力は弱く,情報技術との意味を超えて特定の観念を看取することはできないのに対し,「阪急阪神」は著名な企業グループを表す語であり,「株式会社」は会社組織の一形態を表す語である。したがって,本願商標からは,「阪急阪神グループに属するアイテックという会社」という観念が生じることになるが,引用商標1からは「アイテックという会社」という観念のみが生じ,引用商標2からは具体的な特定の観念は生じないことになるから,本願商標と引用商標1及び2とは観念が異なるといえる。
(3) 称呼
 本願商標からは「アイテックハンキュウハンシン」又は「アイテックハンキュウハンシンカブシキガイシャ」,引用商標1からは「アイテック」又は「アイテックカブシキガイシャ」,引用商標2からは「イテック」又は「アイテック」の称呼がそれぞれ生じ得るものであり,本願商標と引用商標1及び2とは,称呼において共通する部分があるものの前記のとおり識別力が強くない部分にすぎず,全体としてみれば称呼が異なる。

4 取引の実情の検討を踏まえた小括

 以上に判示したところによれば,本願商標と引用商標1及び2とは外観,観念,称呼において異なるので,取引の実情において特段の事情が認められない限り,両者は類似するものではないといわなければならない。
 本件において本願商標と各引用商標との類否を判断するに際して斟酌すべき取引の実情の事実は認めることができず,本願商標と引用商標1及び2とは類似しない。

注記:下線は、判決文では引かれておりません。

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