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平成24(行ケ)10334 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(被告)は,片方を尖らせた楕円様の青色の輪郭線を左右に2つずつバランスよく組み合わせ,その内の3つに若草色を施した構成からなる図形部分(本件図形部分)の右側に接着して,本件図形部分の下半分を占める高さで,「eams」との欧文字を青色の筆記体で横書きして配置した構成からなる商標(以下,「本件商標」という。)につき,第37類「建築物・土木構造物の工事監理」及び第42類「建築物・土木構造物の設計,建築物・土木構造物の耐震性調査及び診断,電子計算機のプログラムの設計及び開発」を指定役務とする登録商標(以下,「本件商標登録」という。)の商標権者である。
 Y(原告)は,本件商標登録が法4条1項11号の規定に違反してされたものであるとして,法46条1項に基づき,本件商標登録を無効とすることについて審判を請求した。前記審判では,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決がされた(以下「本件審決」という。)。
 Yは、これを不服として、提訴した。

判旨

1 商標の類否の判断基準について

 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)。

2 取消事由(商標法4条1項11号に係る認定判断の誤り)について

(1) 本件商標について
ア 本件商標は,片方を尖らせた楕円様の青色の輪郭線を左右に2つずつバランスよく組み合わせ,その内の3つに若草色を施した構成からなる図形部分(本件図形部分)の右側に接着して,本件図形部分の下半分を占める高さで,「eams」との欧文字を青色の筆記体で横書きして配置した構成からなるものである。
イ 本件商標のうち,本件図形部分は,それ自体に着目した場合,これが文字であるとは直ちにいえず,例えば単に植物の葉を図案化したものとみることも可能である。したがって,このように本件図形部分を植物の葉等の何らかの物体を図案化したものと把握した場合,本件商標からは,文字部分に対応する「イームス」又は「イーエーエムエス」との称呼が生じるほか,当該文字部分に対応する英語又は日本語は,直ちに想起し難いから,特定の観念が生じないとみる余地も,ないではない。
 しかしながら,英語では固有名詞を書き表す際などに頭文字のみを大文字で書く場合があることは,我が国でも周知であるところ,本件商標の上記文字部分は,いずれも欧文字の小文字で書かれており,本件図形部分の下半分を占める高さで本件図形部分に接着して配置されている。しかも,本件図形部分は,上記文字部分と接着する右側部分が,主に片方をとがらせた2つの楕円様の青色の輪郭線で構成され,その左側部分よりも大きく描かれ,かつ,左側部分とはわずかに離れて配置されているばかりか,本件図形部分の輪郭線及び当該文字部分は,いずれも同じ青色で構成されている。
 以上のような本件図形部分と文字部分(「eams」)との配置関係や本件図形部分の構成及び配色に照らすと,本件図形部分は,当該文字部分と一連一体となって,「Beams」という「梁」又は「光線」を意味するものとして我が国でも周知の英単語を書き表すために,欧文字の大文字である「B」を筆記体ふうに図案化したものであるとみることができる。したがって,このように本件図形部分を欧文字の大文字である「B」を図案化したものと把握した場合,本件商標からは,「ビームス」との称呼が生じるほか,その英語の意味に従い,「梁」又は「光線」との観念が想起されるというべきである。
ウ 以上によれば,本件商標からは,「イームス」又は「イーエーエムエス」との称呼が生じ,特定の観念が生じないとみる余地もあるが,同時に,「ビームス」との称呼が生じ,「梁」又は「光線」との観念が想起されるものと認められる。
(2) 引用商標について
 引用商標は,いずれも「ビームス」との称呼が生じ,「梁」又は「光線」との観念が想起されることが明らかである。
(3) 本件商標と引用商標との類否判断について
ア 以上を基に本件商標と引用商標との類否を検討すると,まず,本件商標と引用商標3及び4とでは,外観を異にすることが明らかであり,本件商標と引用商標1及び2とでは,いずれも欧文字で「Beams」又は「BEAMS」と記載されている点で共通するものの,文字の大小,その書体及び図案化の程度がいずれも異なっていることから,外観がかなりの程度異なるということができる。
 他方で,本件商標と引用商標とでは,いずれも「ビームス」との称呼が生じ,「梁」又は「光線」との観念が想起されることで一致している。
イ 引用商標の指定役務は,別紙引用商標指定役務目録1及び2に記載のとおりであるところ,これらのうち,引用商標1及び3に関する同目録1に記載の第37類「建築工事に関する助言」は,本件商標の指定役務である第37類「建築物・土木構造物の工事監理」と,同一又は類似のものである。
 また,引用商標2及び4に関する同目録2に記載の第42類「建築物の設計」及び「測量」は,本件商標の指定役務である第42類「建築物・土木構造物の設計」と,同目録2に記載の第42類「建築又は都市計画に関する研究」及び「土木に関する試験又は研究」は,本件商標の指定役務である第42類「建築物・土木構造物の耐震性調査及び診断」と,同目録2に記載の第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」は,本件商標の指定役務である第42類「電子計算機のプログラムの設計及び開発」と,いずれも同一又は類似のものである。
ウ 以上のとおり,本件商標の指定役務は,いずれも引用商標の指定役務と同一又は類似のものであるが,本件全証拠によっても,これらの役務に係る取引に当たり,取引者,需要者が本件商標及び引用商標から出所の異同を識別できる実情があるとは認められない。
(4) 小括
 以上のとおり,引用商標は,いずれも本件商標の商標登録出願日前に商標登録出願がされた原告の登録商標であるところ,本件商標と引用商標とは,その称呼及び観念が一致し,指定役務も同一又は類似するものであって,当該指定役務に係る取引に当たり,取引者,需要者が本件商標及び引用商標から出所の異同を識別できる実情があるとは認められないから,本件商標は,引用商標に類似する商標であって,引用商標の指定役務又はこれに類似する役務について使用するものであるというべきである。
 したがって,本件商標は,商標法4条1項11号に違反して登録されたものであって,本件審決は,その認定判断を誤るものである。

注記:下線は、判決文では引かれておりません。

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