事件の概要
X(原告)は、「天下米」の漢字を筆書き風文字で縦書きした構成からなる商標(以下「本願商標」という。)につき,第30類「不透明の気密性袋に密封包装した福井県産の炊飯用精白米」を指定商品とする商標登録出願(以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,拒絶査定不服審判を請求した。
これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決という。)をした。
Xは、これを不服とし、提訴した。
判旨
本願商標の指定商品「不透明の気密性袋に密封包装した福井県産の炊飯用精白米」と引用商標の指定商品「籾米」とは類似するか
ア 指定商品が類似のものであるかどうかは,商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく,それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には,たとえ,商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても,商標法4条1項11号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である(最高裁昭和36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。
以上を前提として,本件における本願商標と引用商標の各指定商品の類否を検討する。
イ 本願商標の指定商品である「不透明の気密性袋に密封包装した福井県産の炊飯用精白米」と,引用商標の指定商品の「籾米」とが,商品として同じでないことは明らかであるが,本願商標の指定商品が「不透明の気密性袋に密封包装した福井県産の炊飯用精白米」であるとしても,その基本的な特徴は「精白米」である(それ以外の包装方法,産地,用途は付随的な特徴にすぎない。)ことに加え,「籾米」とは「皮を取り去る前の米」(広辞苑第6版)であり,「精白米」は「つきしらげた米。精米。白米」(広辞苑第6版)であって,その基本的な特徴部分はいずれも「米」であり,単にその状態が異なるにすぎない。
そして,両指定商品に関して,一般的に,稲作農家が籾米を生産して販売し,米屋が精白米を販売するという細かな違いが存在するとしても,「米」は食用に供されるもので,その需要者は一般消費者であるなど,その基本的な性質は同じであることに加え,本願商標は,単に「天下米」と記載するのみであって,それ以上に,米の状態,すなわち「精白米」であって「籾米」でないことは記載していないのであるから,それぞれの指定商品に本願商標及び引用商標が付された場合,同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認されるおそれがあると認められる。
このように,本願商標をその指定商品「不透明の気密性袋に密封包装した福井県産の炊飯用精白米」に使用した場合,引用商標をその指定商品中「籾米」に使用した場合とで誤認混同が生じるおそれがあるということができるから,本願商標と引用商標の各指定商品は類似するというべきであ
る。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。