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平成23(行ケ)10375 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(原告)は、「POWERWEB」の文字を標準文字で表して成る商標(以下「本願商標」という。)につき,第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とする商標登録出願(以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,拒絶査定不服審判を請求した。
 これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決という。)をした。
 Xは、これを不服とし、提訴した。

判旨

(1) 認定事実を基に,本願商標と引用商標の類否について判断する。
ア:外観について
 引用商標は,上段の「POWERWAVE」と下段の「パワーウェーブ」とが全体としてまとまった外観を呈しており,これを全体として本願商標の「POWERWEB」と対比すると,両商標が外観上相違することは明白である。
 もっとも,引用商標の下段の「パワーウェーブ」は,上段の「POWERWAVE」の読みを表したものと容易に理解することができるから,引用商標に接した取引者,需要者は,上段の「POWERWAVE」のみを記憶に留めるか,あるいは,下段の「パワーウェーブ」よりも上段の「POWERWAVE」をより強く記憶に留めるということも十分に考えられ,また,上段下段とも記憶には留めたとしても,本願商標に接した際に,引用商標の上段のみを想起するということも考えられる。このような場合には,本願商標と引用商標の外観上の類否の判断は,本願商標の「POWERWEB」と,引用商標上段の「POWERWAVE」とを比較対照して行うのが相当である。
 そこで,「POWERWEB」と「POWERWAVE」とを比較対照すると,両者は,語頭からの6文字「POWERW」を共通にする。
 しかし,両者を構成する文字数は8文字ないし9文字と比較的少なく,このうちの2文字ないし3文字は全く異なっている。
 また,「POWERWEB」は,英単語の「power」と「web」に相当する「POWER」と「WEB」の2つの単語を組み合わせたものであり,「POWERWAVE」は,英単語の「power」と「wave」に相当する「POWER」と「WAVE」の2つの単語を組み合わせたものであることは,一般人にとって容易に理解可能であり,「POWER」,「WEB」,「WAVE」のように,一般人にとって観念を容易に想起し得る単語を組み合わせた語について,これを構成する単語に分けてその外観を認識することは通常のことである。
 加えて,「パワー(power)」を包含するスポーツ用語は各種スポーツの分野で数多く使用されており〔「パワー(power)」は,筋力と筋収縮速度で決定される単位時間当たりの仕事量等を意味するスポーツ用語として普通に使用されている。また,「パワー(power)」を語頭に含む言葉は多数あり,スポーツ用語として普通に使用されている。スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の文字の自他商品識別力は,同じくスポーツ関係の商品に使用される「WEB」及び「WAVE」の文字の自他商品識別力よりも強いものとはいえない。なお,「POWER」を語頭に含む登録商標は少なくとも60以上あるから,第24類「運動用特殊靴,その他の運動具」を指定商品として「POWER」の文字のみからなる登録商標が存在することは,この認定の妨げとなるものではない。そして,本願商標と引用商標の指定商品は,いずれもスポーツ関係のものである。
 上記の諸点を勘案すると,「POWERWEB」と「POWERWAVE」の類否の判断において,両者がいずれも一般人にとって観念を容易に想起し得る単語を組み合わせた語であることや,スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の自他商品識別力と「WEB」及び「WAVE」のそれとの相違を考慮することなく,それぞれを構成する文字の共通性のみを強調することは相当ではなく,「POWER」と組み合わされた「WEB」と「WAVE」の外観上の相違を軽視することはできないというべきである。そして,「POWER」と組み合わされた「WEB」と「WAVE」とは,語頭の「W」を共通にするのみであり,その他の文字及びその配列に共通性はない。
 以上によれば,「POWERWEB」と「POWERWAVE」とは,外観において相違するというべきである。
 したがって,本願商標と引用商標とは,外観において相違する。
イ:観念について
 本願商標からは「力のある網」,「力のある網目」,「力のあるワールドワイドウェブ」程度の観念が生じ,引用商標からは「力のある波」,「力のある波動」程度の観念が生じるから,両商標は観念においても相違する。
ウ:称呼について
 本願商標からは「パワーウェブ」,「パワーウエブ」,「パワーウエッブ」といった称呼を生じ,引用商標からは「パワーウェーブ」という称呼を生じるから,両商標の称呼上の差異は,「ウェ」に続く長音「ー」の有無のみであるか,あるいは,「ウ」に続く称呼が「エ」又は「エッ」であるか,「ェー」であるかのみである。
 しかし,前記のとおり,「POWERWEB」は,「POWER」と「WEB」の2つの単語を組み合わせたものであり,「POWERWAVE」は,「POWER」と「WAVE」の2つの単語を組み合わせたものであることは,一般人にとって容易に理解可能であり,「POWER」,「WEB」,「WAVE」は,いずれも一般人にとって観念を容易に想起し得る単語であること,スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の文字の自他商品識別力は,同じくスポーツ関係の商品に使用される「WEB」及び「WAVE」の文字の自他商品識別力よりも強いものとはいえないことからすると,両商標の語調語感は自ずと相異なる。
 したがって,両商標は,称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではない。
エ:両商標の類否
 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,外観及び観念において相違し,称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではないこと,また,取引の実情として,外観や観念よりも称呼によって商品の出所を識別しているなど,称呼上の識別性が外観及び観念上の識別性を上回っているような事情は認められないことに照らせば,両商標は,外観及び観念上の相違が称呼上の類似性を凌駕するものというべきである。
 したがって,両商標は類似しない。

注記:下線は、判決文では引かれておりません。

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