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平成23(行ケ)10252 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(原告)は、「海葉」の文字を標準文字で表して成る商標(以下「本願商標」という。)につき,第29類「かまぼこ,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),肉製品,かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり」を指定商品とする商標登録出願(以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,拒絶査定不服審判を請求した。
 これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決という。)をした。
 Xは、これを不服とし、提訴した。

判旨

1 本願商標及び引用商標について

(1) 本願商標は,「海葉」の漢字を標準文字で表記したものである。
 本願商標は,全証拠によっても辞書に収録された成語であるとは認められないものの,これを構成する「海」と「葉」の文字は,いずれも平易,常用,かつ一般人にとって観念を容易に想起し得る漢字であり,また,2文字程度の漢字を組み合わせた単語について,これを構成する文字からその意味を理解することも通常のことであるから,本願商標からは,「海」と「葉」から生じる観念を組み合わせた,「海草の葉っぱ」,「海に浮いた葉っぱ」程度の観念を生じるものと認められる。
 また,本願商標からは,構成文字に応じて,「カイヨウ」,「ウミハ」の称呼が生じ得るところ,Xは,本願商標を指定商品に含まれるかまぼこに使用する際に,「かいよう」の読み仮名を付しているから,本願商標からは基本的に「カイヨウ」の称呼が生じるものと認められる。
(2) 引用商標は,「海陽」の漢字を,行書体に近い筆書体により縦書きで表記したものである。
 引用商標も,本願商標と同様に,全証拠によっても辞書に収録された成語であるとは認められないが,平易,常用,かつ一般人にとって観念を容易に想起し得る漢字を組み合わせたものであり,「陽」の文字からは「日の当たっている側」,「太陽」等の観念を生じるから,一般人にとって,構成文字である「海」と「陽」から生じる観念を組み合わせた,「海に昇る太陽」,「海に沈む太陽」,「海の日の当たる場所」程度の観念を生じるものと認められる。
 また,引用商標からは,構成文字に応じて,「カイヨウ」,「ウミヒ」の称呼が生じ得るところ,引用商標権者は,引用商標を指定表品に含まれるかまぼこに使用する際に,「かいよう」の読み仮名を付しているから,引用商標からは基本的に「カイヨウ」の称呼が生じるものと認められる。

2 本願商標と引用商標との類否

(1) 類否の判断
 外観について,本願商標と引用商標は,それぞれを構成する漢字2文字のうち,先頭の1文字が「海」であって共通するものの,「海」ともう1文字の漢字を組み合わせた単語は非常に多く存在するから,「海」と組み合わされる漢字の外観上の相違を軽視することはできないというべきである。そして,本件においては,「葉」と「陽」との間に旁(つくり)や偏(へん)の共通性はなく,その相違は大きいから,全体として両者は外観が大きく異なる。
 観念についても,本願商標からは「海草の葉っぱ」,「海に浮いた葉っぱ」程度の観念が生じるのに対し,引用商標からは,「海に昇る太陽」,「海に沈む太陽」,「海の日の当たる場所」程度の観念が生じるから,両者は観念において大きく異なる。
 称呼について,本願商標と引用商標から生じる称呼は,いずれも基本的に「カイヨウ」であり,基本的に同一である。
 以上のとおり,本願商標と引用商標とは,その外観,観念において大きく相違し,称呼において基本的に同一であるところ,海の母音である「あい」も,葉や陽の母音である「おう」も,漢字の音読みとしてありふれた読みであり,これに「K」と「Y」の子音を組み合わせた「KあいYおう」との称呼は2文字の漢字のありふれた読みからくるもので,外観,観念の相違に比較すると,識別力が弱いものである。
 そして,本件において,この判断に反して特に考慮すべき取引の実情は認められないから,本件においては,外観と観念の相違が称呼の共通を凌駕するものというべきであって,指定商品について共通するものがあるとしても,本願商標と引用商標とは類似するものではないというべきである。


注記:下線は、判決文では引かれておりません。

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