事件の概要
X(原告)は、赤色の横長矩形内に,上段中央部に片仮名で「スーパー」をやや小さく,下段中央部に平仮名で「みらべる」をやや大きく,いずれも白色の縁取りがされた黒色の太文字で,横書きして成る商標(以下「本願商標」という。)につき,第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務とする商標登録出願(以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,拒絶査定不服審判を請求した。
これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決という。)をした。
Xは、これを不服とし、提訴した。
判旨
1 商標の類否判断について
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察し,取引の実情を明らかにし得るかぎり,具体的な取引状況に基づいて判断されるべきであり,このような考察によって,役務や商品の出所についての誤認混同を来すおそれがないものについては,類似の商標とすべきではないというべきである(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参照)。また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日裁判集民事228頁561頁参照)。
そこで,上記の観点から本件について判断する。
2 本願商標と引用商標の類否についての判断
(1) 認定した事実に基づいて,本願商標と引用商標との類否を判断する。
本願商標は,赤系色の横長矩形内に,上段中央部に片仮名で「スーパー」をやや小さく,下段中央部に平仮名で「みらべる」をやや大きく,いずれも白色の縁取りがされた黒色の太文字で,横書きしたものであって,鮮やかで明瞭な配色により,全体として,まとまった外観を呈しているのに対し,各引用商標は,「MIRABELL」,「Mirabell」及び「MIRABEL」であり,本願商標と引用商標とは,その外観において,著しく相違する。
本願商標は,「スーパーミラベル」の称呼を生じるとともに,場合によって,「スーパー」ないし「ミラベル」の称呼を生じる余地があり,これに対し,引用商標は,「ミラベル」の称呼を生じることから,本願商標が「スーパー」,「スーパーミラベル」の称呼を生じる場合には,両者の称呼は類似しないというべきであるが,本願商標が「ミラベル」の称呼を生じる場合には,類似することがある。
本願商標が一般的な観念を生じないと解される場合には,引用商標は格別の観念を生じないので,対比することができず,結局,両商標は,類似するとまではいえない。本願商標が,「『みらべる』との名称のスーパーマーケット」との観念が生じる場合があるならば,引用商標は格別の観念を生じないので,両者は,類似しない。
また,Xは,各店舗の出入口の上部に,本願商標とほぼ同一の書体と色彩により「スーパーみらべる」の店舗名の表示を掲げるなどして,本願商標を顧客に対する便益の提供役務に使用している実情があり,引用商標と類似する使用態様がされているとの事実は存在しない。
(2) 以上によれば,本願商標と引用商標とは,「ミラベル」との称呼において類似する場合があり得たとしても,外観において著しく相違し,かつ観念において類似するとはいえず,取引の実情等を考慮しても,本願商標がその指定役務「『飲食料品』,『食肉』,『食用水産物』,『野菜及び果実』,『菓子及びパン』,『牛乳』,『清涼飲料及び果実飲料』,『茶・コーヒー及びココア』,『加工食料品』の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用された場合に,引用商標との間で商品ないし役務の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから,両商標は,類似しない。
注記:下線は、判決文では引かれておりません。また、事実認定の記載は省略しています。