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平成23(行ケ)10093 審決取消請求事件

>判例・裁判例>商標(商標及び商品・役務の類否)判例・裁判例>

事件の概要

 X(原告)は、上段の「P」「A」「G」の文字,「!」の符号,足跡状の図形及び下段の「Point AD Game」のすべてが,青色の輪郭線又は塗りつぶされた文字で表記されて成る商標(以下「本願商標」という。)につき,第9類「携帯電話用ゲームソフトウェア,コンピュータゲームソフトウェア,家庭用ビデオゲーム機用ゲームソフトウェア,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,業務用ビデオゲーム機用ゲームソフトウェア,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用双方向型ゲームソフトフェア」及び第42類「電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務とする商標登録出願(以下「本願」という。)をしたが,拒絶査定を受けたので,拒絶査定不服審判を請求した。
 これに対し,特許庁は,「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決(以下「審決という。)をした。
 Xは、これを不服とし、提訴した。

判旨

1 商標の類否判断の基準について

 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日裁判集民事228頁561頁参照)。
 そこで,上記の観点から本件について検討する。

2 本願商標と引用商標の類否についての判断

イ:本願商標と引用商標との対比
 本願商標は,その外観は,「P」「A」「G」の文字,「!」の符号,足跡状の図形及び下段の「Point AD Game」のすべてが,青色の輪郭線又は塗りつぶされた文字で表記され,全体として,まとまりのある一体的な図形として描かれていること,上段の「PAG」の欧文字及び「!」の符号は,袋文字風にデザインされて横書きされ,このうち「P」の文字は,直線のみから構成され,欧文字「A」を左斜めに倒したような独特の字体が用いられていること,上段の「PAG」の文字は,下段の「Point AD Game」の頭文字であることが想起されること,足跡状の図形がオレンジ色に塗りつぶされ,アクセントをつけていること等の特徴があるのに対し,引用商標は,「PAG」の欧文字を横書きしたものであり,両商標は,外観において,相違する。
 本願商標は,「ピーエージー,ポイントエーデーゲーム」,「ピーエージー,ポイントアドゲーム」,「パグ,ポイントエーデーゲーム」,「パグ,ポイントアドゲーム」,「ピーエージー」などの称呼が生じ得るのに対して,引用商標は,「ピーエージ」,「パグ」の称呼を生じる余地がある。本願商標は,さまざまな称呼が生じる余地があること,引用商標は,何らの観念も生じず,確定的な称呼が生じるとはいいがたいことに照らすと,両商標は,称呼において,類似するとはいえない。
 本願商標は,「Point AD Game」の文字部分からは,何らかの点数や広告等に関連するゲームないしゲーム機を連想させる余地があり,図形部分からは,動物の足跡と連想させる余地があるのに対し,引用商標は,何らの観念を生じないから,両商標は,観念において,類似するとはいえない。
ウ:取引の実情等
 証拠及び弁論の全趣旨によれば,@Xは,そのウェブサイト上で本願商標を使用しており,本願商標が付された商品ないしサービスについて,「広告とポイントバックを連動させたアドバゲーム(ポイントアドゲーム)」などと説明していること,A引用商標の商標権者であるキャタピラー社は,主にブルドーザや油圧ショベルなどの建設機械を製造,販売する会社であること,Bキャタピラー社の前身であるキャタピラー三菱株式会社は,昭和57年ころ,生産分析サービスに「PAG」との名称を付していたこと,CXは,平成23年3月9日付けで,引用商標につき,指定商品中,第9類「電子応用機械器具及びその部品」について,キャタピラー社を被請求人として,商標法50条1項に基づく不使用取消審判を請求し,これに対し,特許庁は,同年6月28日,引用商標につき,上記指定商品について,登録を取り消すとの審決をしたこと,が認められる。
 以上によれば,引用商標の上記不使用取消審決が直ちに本件審決を違法にするものではないとしても,引用商標権者であるキャタピラー社は,少なくとも上記不使用取消審決に係る審判請求の予告登録の3年前から,上記指定商品に関しては,引用商標を使用していなかったことが推認され,その他の取引の実情等に照らしても,本願商標がその指定商品ないし指定役務に使用された場合に,引用商標との間で商品ないし役務の出所に誤認混同を生じさせるような事情は認められない。
エ:小括
 以上によれば,本願商標と引用商標とは外観において相違し,観念及び称呼が類似するとまではいえず,取引の実情等を考慮しても,本願商標がその指定商品ないし指定役務に使用された場合に,引用商標との間で商品ないし役務の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから,両商標は,類似しない。

注記:下線は、判決文では引かれておりません。また、事実認定の記載は省略しています。

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