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平成24(行ケ)10043 審決取消請求事件

>判例・裁判例>特許(発明)判例・裁判例>

事件の概要

 X(原告)は,発明の名称を「偉人カレンダー」とする発明について,特許出願をした(以下「本願」という。)が、本願について拒絶査定がされた。
 Xは、これを不服とし、拒絶査定不服審判を請求したが、「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)がされた。
 Xは、これを不服とし、提訴した。
 なお、本願の特許請求の範囲の記載は、下記の通りである。
 『西暦年度,見出し,偉人図又は写真及び前記偉人図又は写真の近傍に当該偉人の読み方を併記した偉人名記載欄並びに読み方を示した当該偉人の偉人伝要約欄を有する1月から12月までのカレンダーに使用する偉人表示欄を表記した表紙と, 上部には当該偉人の読み方を併記した名記載欄と偉人図又は写真,当該偉人に縁のある写真又は絵図表示欄,偉人の出身地を示した地図,偉人の生存期間記載欄を設け,中央部には代表的な業績を読み方とともに記載した偉人伝要約欄,偉人の生涯,業績,エピソードを読み方とともに記載した偉人伝概説欄を設け,下部には年度欄,月表示欄,曜日欄,日付欄を設けたカレンダー部と, からなることを特徴とする偉人カレンダー。』(以下「本願発明」という。)

判旨

(1)審決は,本願発明の創作的特徴は情報の単なる提示にすぎず,情報の内容をどのようにするかは人間の精神活動そのものであって,上記情報の提示に技術的特徴を見いだすことができず,自然法則を利用した創作ということができないとして,本願発明は,特許法2条1項にいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず,同法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないと判断したものであるところ,Xは,発明とは,同法2条1項で定義されているとおり,@自然法則を利用したものであること,A技術的思想であること,B創作であること,C高度のものであることが要件であり,本願発明は発明の要件を具備しており,審決の判断は誤りであると主張する。そこで,本願発明が,特許法2条1項に規定された「発明」に該当するかについて,以下に検討する。
(2)
ア: 特許法2条1項は,発明について,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と規定する。ここにいう「技術的思想」とは,一定の課題を解決するための具体的手段を提示する思想と解されるから,発明は,自然法則を利用した一定の課題を解決するための具体的手段が提示されたものでなければならず,単なる人為的な取決め,数学や経済学上の法則,人間の心理現象に基づく経験則(心理法則),情報の単なる提示のように,自然法則を利用していないものは,発明に該当しないというべきである。そして,上記判断に当たっては,願書に添付した特許請求の範囲の記載全体を考察し,その技術的内容については明細書及び図面の記載を参酌して,自然法則を利用した技術的思想が,課題解決の主要な手段として提示されているか否かを検討すべきである。
イ:(ア) 本願の特許請求の範囲及び明細書の記載によれば,本願発明は,@提示情報を偉人情報とし,A提示態様を特定の提示項目及び特定の配置とし,Bそれを表紙及びカレンダー部によりなるカレンダーに定着させ,これによって,C毎日見るという特性を有するカレンダーとする,という具体的手段により,ユーザに偉人に関する知識を自然に習得させる,という課題を解決するものである,と認められる。以下,上記@〜Cについて,それぞれ検討する。
@ 提示情報を偉人情報とすること
 本願発明は,社会人として身に付けるべき知識又は学業に役立つ教養として,偉人に関する知識が必要であるとの認識の下,提示すべき情報として偉人情報を採用した。
 しかしながら,提示する情報が,社会人として身に付けるべき知識,学業に役立つ教養であるか否かという判断は,自然法則とは無関係な人間の主観に基づく選択にすぎず,その結果として偉人情報を採用することについても,たとえ採用に至る過程で何らかの労力を伴ったとしても,単なる人為的な取決めにすぎない。
A 提示態様を特定の提示項目及び特定の配置とすること
 本願発明において,偉人カレンダーの表紙は,本願明細書の【図1】に例示されているように,西暦年度と,見出しと,1月から12月までのカレンダーに使用する偉人表示欄とを有し,それぞれの偉人表示欄は,偉人図又は写真と,当該偉人図又は写真の「近傍」に設けられ,当該偉人の読み方を併記した偉人名記載欄と,読み方を示した当該偉人の偉人伝要約欄とを有する。
 しかしながら,表紙において偉人情報を提示する際,提示すべき事項としてどのような情報を選択するかは,発明者の主観に基づく単なる人為的な取決めにすぎず,また,その結果として特定された提示項目の集合についても,情報の単なる提示の域を超えるものではない。また,「偉人図又は写真」の近傍に「偉人名記載欄」を配置すれば,これらの情報の関連の視認性(見やすさ,分かりやすさ)が高まるといった一定の効果が認められるものの,そのような提示形態自体は,何ら自然法則を利用した具体的手段を伴うものではなく,情報の単なる提示の域を超えるものではない。
 また,本願発明のカレンダー部は,本願明細書の【図2】に例示されているように,(a)カレンダー部の「上部」に,当該偉人の読み方を併記した名記載欄と偉人図又は写真,当該偉人に縁のある写真又は絵図表示欄,偉人の出身地を示した地図,偉人の生存期間記載欄を設け,(b)カレンダー部の「中央部」に,代表的な業績を読み方とともに記載した偉人伝要約欄,偉人の生涯,業績,エピソードを読み方とともに記載した偉人伝概説欄を設け,(c)カレンダー部の「下部」に,年度欄,月表示欄,曜日欄,日付欄を設けたものである。
 しかしながら,カレンダー部において上記(a)〜(c)の情報を提示する際,提示すべき事項としてどのような情報を選択するかは,発明者の主観に基づく単なる人為的な取決めにすぎず,その結果として特定された提示項目の集合についても,情報の単なる提示の域を超えるものではない。また,偉人情報に関する特定の事項と,カレンダー情報とを「上部」,「中央部」及び「下部」の3段組で配置すれば,情報を外観上整理して提示でき,その結果として,見やすさ,分かりやすさといった一定の効果が認められるものの,そのような提示形態自体は,何ら自然法則を利用した具体的手段を伴うものではなく,情報の単なる提示の域を超えるものではない。したがって,そのような提示形態を上記(a)〜(c)の情報の配置に用いたとしても,情報の単なる提示の域を超えるものではない。
B 表紙及びカレンダー部よりなるカレンダーに定着させること
 本願発明は,「偉人カレンダー」とされていることから,カレンダーという物品を特定していると認められるが,その構成については,表紙とカレンダー部とを有することが漠然と特定されているにすぎない。そして,本願明細書の発明が解決しようとする課題,課題を解決するための手段及び発明の効果の記載によれば,本願発明は,カレンダーを用いて偉人情報を提示するという点に創作性がある発明として出願されたものと認められ,表紙及びカレンダー部のそれぞれは,偉人情報を提示するための紙面を提供するにすぎず,それ以上の情報提示の具体的手段を特定するものではない。そうすると,本願発明は,「表紙及びカレンダー部よりなるカレンダー」と特定することにより物品を形式的には特定しているものの,実質的には,偉人情報とカレンダー情報とが併記された複数枚の紙面,すなわち,情報を提示するための単なる紙媒体と何ら異なるものではない。
 そうすると,「表紙及びカレンダー部とを有するカレンダー」といった,物品の漠然とした特定をもって,本願発明が自然法則を利用したものであると評価することはできない。
C 毎日見るという特性を有するカレンダーとすること
 本願発明は,偉人情報の提示媒体として「毎日見るという特性を有するカレンダー」を用いること,すなわち,偉人情報を特定の提示形態で提示することによって,偉人に関する知識を自然に習得させるという効果を奏するものである。
 偉人に関する知識を自然に習得させるために,毎日見るというカレンダーの特性に着目した点については,一定の創作性が認められるとしても,それは,専ら,人間の習慣(人間は日常生活において日にちや曜日を確認すること),及びカレンダーの利用態様(カレンダーは見やすい場所に設置されること)に基づくものにすぎず,自然法則に基づくものではない。また,偉人カレンダーを情報を提示する媒体とすることにより,ユーザに偉人に関する知識を自然に習得させるという効果は,人間の心理現象である認識及び記憶に基づく効果にすぎず,自然法則を利用したものであると評価することはできない。
(イ) 以上に検討したとおり,本願発明は,その課題,課題を解決するための具体的手段として特定された構成,効果等の技術的意義を検討しても,自然法則を利用した技術的思想が,課題解決の主要な手段として提示されていると評価することができないから,特許法2条1項に規定された「発明」に該当するということができない。
(3) 以上のとおり,本願発明は特許法2条1項に規定された「発明」に該当するということができないから,本願発明について,特許法2条1項にいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず,同法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないとした審決の判断に誤りはない。

注記:判決文では下線は引かれておりません。

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1.中国

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2.香港

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